コラム『モノづくり工場の創意工夫(6)』
パナソニック株式会社の幸前です。さて、『モノづくり工場の創意工夫』第6回目(最終回)の投稿です。
計5回のコラムにおいて、多品種少量生産で低コストを実現されているモノづくり工場の創意工夫を『5S』『見える化』『生産管理』『標準作業』の切り口で紹介してきました。
今回、コラムで述べてきた内容を実践されている工場(A社・B社・C社)の成果事例を紹介し、総括とします。
尚、所々に表れる専門用語の定義については割愛します。ご容赦下さい。
[A社] 『見える化』の取り組み事例
A社は、昨今の多品種少量生産の対応に苦慮され、厳しい経営状況に陥っていた。
そこで、今現在、どれだけの【収益】を獲得しているか?を明確にすべく、【共通のモノサシ(KPI)】を工場 ⇒工程 ⇒ライン ⇒個人まで細分化・設定、【正常異常の判断】を素早くし、【自主的な問題解決】を導く『見える化』の仕組みを構築された。
(『見える化』の創意工夫は、第3回目のコラムをご確認下さい)
結果、一人ひとりのコスト意識向上!
衆知の結集による全員参加経営で、前年比6倍・過去最高の利益獲得に至った。
※ここが重要
情報共有⇒共通認識⇒一心行動により、【個人のコスト意識】を醸成、一人ひとりが問題を発見し続け、能動的に【仕事のやり方】を進化し続けている!と言える。
[B社] 『生産管理』の取り組み事例
B社は、多品種少量生産の進化、および、顧客要望による突発注文・納期変更等々、モノづくり環境が刻々と厳しさを増す昨今、アウトプット低下等々による納期遅延で、顧客との信頼関係が揺らぎ始めていた。
そこで、各工程・各作業において、サイクルタイムや稼働率等々の『マスター管理』を強化することで、 【高精度】な生産計画時間の算出を実現した。
また、『資材管理』との連携による【高精度】な『生産計画』、および、【高鮮度(タイムリー)】な『実績管理』を実現、各工程・各作業と【好連携】を可能にする仕組みを構築された。
(『生産管理』の創意工夫は、第4回目のコラムをご確認下さい)
結果、アウトプット向上・製造LT短縮により、納期遅延撲滅、顧客の期待価値に応え続けている。
※何故、【高精度】【高鮮度】【好連携】が実現できたか?
『マスター』のメンテナンスや『実績』の収集等、【人の意識で守るルール】から、設備や制御ユニット等を駆使し、【人が介在しない(そうせざるを得ない)】仕組みを構築、それが実現をもたらした。
[C社] 『標準作業』の取り組み事例
C社は、更なる多品種少量生産により、短期間 かつ 最少工数で最大効果を獲得すべく、より高レベルなモノづくりの必要に迫られていた。
そこで、日本生工技研殿の作業動作分析ソフト【タイムプリズム(以下、TP)】を活用し、標準作業の更なる進化を狙った独自のプロセスを構築された。以下に示す。
1.各工程(各製品)の標準作業 (要素作業(単位動作))を【TP】でDB化
2.新機種生産時、実生産前にオフラインにて【TP】で作業分析
3.上記2.を通じ、【TP】で作業編成(オフラインで作業編成)
4.【TP】での作業分析・編成をもとにした工程設計で新機種生産スタート
オフライン作成データと現場実績データのGAPをチェックし、上記1.~4.を繰り返し、標準作業の進化を狙う
5.多工程・多機種かけもち生産時、リーダー・作業者が事前に【TP】データを確認、標準作業の早期実現を狙う
結果、以下の効果を獲得!
・新機種立上げLT:33%短縮
・作業効率 :15%向上
・作業習熟時間 :43%削減
※C社工場責任者の声
多品種少量生産における垂直立上げの改善プロセス構築は大きな成果である。
【TP】は、【今となっては必要不可欠なツール】、今後、【TP】を核とし、モノづくりプロセスの更なる進化を狙いたい!
以上、今回、紹介しました3社の共通点は『PDCAを永続的にスパイラルアップ』し続けている!ことです、それが、更なる高収益工場に導いてくれると考えます。
長期間にわたり、お付き合い頂き感謝致します。
小生のコラムが貴工場の進化の一助になれば幸いです。益々のご発展を祈念致します。
尚、コラムは、パナソニック株式会社の見解を示すものではありません。
日々のモノづくり工場のコンサルティング業務を通じ、小生が実感していることを自由に描いたものであります。